seemoreglass’s diary

読んだ本の引用、好きな作品の紹介

【引用】倉橋由美子の罵倒芸(『最後の祝宴』より)

最後の祝宴

最後の祝宴

倉橋由美子罵倒芸が堪能できるエッセイより。

これから江藤淳さんにむかって突如罵詈雑言をならべるのは、生意気で憎らしい男の子にむかって女の子が「いィーだ」といって唾を吐くのと同じことで、他意はありません。江藤さんはその丈夫な唇に唾液をためてしゃべりまくることを商売としていらっしゃるようですが、その飛沫がときおりわたしの顔にも散りかかるのははなはだ迷惑なものです。しかも弱い女の子だとみていい気になっておられるふしがあるからには、いつまでも無礼をかさねるままにしておくことはできない、そのうちこちらも唾を吐きかえしてやりましょうという気にもなるのです。(「批評の哀しさ 江藤淳さんに」p.170)

どうやらこの批評家は先天的に「詩人」を欠いた畸形児で、おまけにユーモアというものもまるでご縁がないものとおみうけいたします。それというのも江藤さんの批評精神がじつは自分を優越感の高みへとおしあげるポンプにすぎず、対象とつきあい対象をよくみるという余裕がないからでしょう。(同上、p.172)