seemoreglass’s diary

読んだ本の引用、好きな作品の紹介

【あらすじ】【引用】シェーアバルト『セルバンテス』(垂野創一郎訳)

セルバンテス

セルバンテス

20人の鍛冶屋たちが環状に並びいっせいに地面を搗くやいなや、床が裂けてそこから文豪セルバンテスドン・キホーテサンチョ・パンサが老馬ロシナンテの背に乗ってあらわれる。ロシナンテは巨大化しており、「老象二頭分ほどもあった」。〈わたし〉はこの三人と一緒にロシナンテに乗り、世界一周の旅に出る。

何とも奇想天外で楽しい話だが、ロシナンテセルバンテスの決闘のシーンが特に好き。セルバンテスロシナンテに決闘を申し込むと、ロシナンテの尾が千のフェンシングの剣(フルーレ)となる。「セルバンテスに勝ち目はないと誰もが思った」が、セルバンテスが「輝く剣を千尾の剣の中心に突き入れる」と、「ロシナンテは怯え、高くいなな」き、それまで尾があったところに風車小屋が現れる。その後、強風が起こり風車が回りはじめると、風車の回転を利用してロシナンテは空へ飛び立つ。

窮乏生活になじみのない者は、偉大なる人生ともまた縁がなく、阿呆のままにとどまり、二流の御者風情になるのがせいぜいだ。(中略)惨めな生活こそユーモアの母胎、そしてユーモアこそ詩と芸術の命だからの。何不自由ない暮らしからは、せいぜい屁のようなユーモアしか生まれぬ。(14-15)

続いてサンチョがスペインの恋歌を歌った――まるで油でいためたように響く声で。(32)