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seemoreglass’s diary

読んだ本の引用、好きな作品の紹介

【あらすじ】D・H・ロレンス「木馬の勝者」(『ロレンス短篇集』所収)

ロレンス短篇集 (岩波文庫)

ロレンス短篇集 (岩波文庫)

主人公ポールの母親はいつも「もっとお金がなくては!」と嘆いている。ポールがその理由を問うと、「うちのパパに運(ラック)がないからだ」と答える。そこで、ポールは幸運を探し求めることにする。自分の大きな揺り木馬にまたがって、馬の首を鞭で打ちながら。こうすることで馬が運の待っているところへ連れて行ってくれると信じていた。

ポールに幸運をもたらしたのは競馬だった。競馬狂である庭師のバセットから話を聞いて賭け始めたのだが、ポールにはどの馬が勝つのかがわかることがあるのだった。このことを聞いたポールの叔父も仲間に加わり、ポールは一万ポンドを儲けた。

ポールは叔父と相談し、このうち五千ポンドを遠縁にあたる筋からということにして母親に贈ることにする。これで母がお金がないと嘆くことがなくなると思ったのだ。

しかし、このお金を受け取った後、母はそれまでにも増して「もっとお金がなくては!」とわめくようになった。憑かれたような震える声で。
ポールは家庭教師をつけられ、イートン校にやられることが決まった。ポールの霊感は失われ競馬で勝てなくなり、様子がおかしくなっていく。心配した母親は海辺にでも行った方がいいと提案するが、ダービーがすむまでは家にいたいと訴える。

ダービーの二日前、夜遅くパーティーから帰った母親が目にしたのは、自室で木馬にまたがり狂ったようにゆすっている息子の姿だった。母が声をかけるとポールは「マラバーだ!」と叫んでから、意識を失い床に倒れた。

それから少年は回復せず、ダービーでマラバーという名の馬が一着となったと聞かされたその日の夜、息を引き取る。

わが子の遺体を前に、母親は弟が語りかけるのを聞いた――「やれやれ、ヘスター姉さんは八万何千ポンドか儲けたが、かわいそうに、坊やは命をすっちまった。しかし、かわいそうにな、坊やはこの世から脱け出せてよかっただろう。この世じゃ、勝ち馬を見つけるまで木馬に乗らなきゃならんのだから」(70)

補足

この作品は下記の本で取り上げられている。この本はイギリス小説のブックガイドとして大変秀逸なのでおすすめ。